2016年 5月16日〜31日
5月16日 ロビン〔調教ゲーム〕

 今回は村人じゃよ。フォフォフォ。

 ライアンの提案した自然音のBGMは雰囲気あるのう。夜ターンのカサコソ音が消えるし、風の音が惨劇の夜にふさわしい。
 ミハイルが言った。

「朝だ。死者はぼくだ。全員起きて、吊る相手を決めよう」

 ミハイル、簡潔じゃ。まあよい。

「誰かの?占い師は」

 キースが、ニャンと手をあげた。

「占いだニャン」

 うむ。ちょっと顔が赤いががんばっとる。

「結果は」

「ヒロは白だニャン」

 ジルがぼそっと言った。

「つまんねえな」

「――」

「正体明かす必要なかったんじゃねえか」


5月17日 ロビン〔調教ゲーム〕

 エリックが止める。

「待ちたまえ。狩人にとって、占い師があきらかになることは無駄ではない。――そして、キミは、なんの訛りだ。ちなみにわたしは探偵だ」

「……ヤクの売人」

 みんながぐっと吹きかけた。リアンが笑ってしまった。

「そのまんまじゃねえかよ」

「じゃ、おめえはなんだ」

「――海賊?」

「よくわかんねえよ!」

 まあま、とヒロが入る。

「材料が出たのは今後の目安になるピョン」

「ぴょん?!」

「ウサギだピョン」

「……」

 みんな笑ってしまった。無理やり結構。しゃべれればいいんじゃよ。


5月18日 ロビン〔調教ゲーム〕

 コスタが言った。

「そろそろ誰を吊るか決めるがよいぞ。わらわは退屈じゃ。ちなみに貴婦人」

 みんな、ぶふっと笑った。おれも言った。

「わし、サンタ。フィルは?」

「貴婦人が出たから、執事にす――いたします。キースのほかに占い師の方はいらっしゃいますか?――なければ、サンタでも吊るしますが」

 ひいい。何をいうのじゃ。

「さ、サンタを吊るすとな!世界中の子どもたちが泣くぞ」

「そろそろ奥様のお茶の時間ですから」

 コスタも扇をあおぐマネをする。

「そうじゃ。早くしてたも」


5月19日 フィル〔調教ゲーム〕

「もし」

 ライアンが割って入った。

「フィルさは、なんでロビンさを吊るしたいだ? 材料があるなら、聞きてえな」

 ですわよ、とアンディも小さく言った。言って赤くなった。

「揺さぶりでございます。サー」

 フィルは微笑した。

「誰か吊り上げてみたら、利害関係者が発言するかもしれませんのでね」

 エリックが渋い顔をする。

「危険じゃないのかね。ロビンがもし占い師なら」

「とは申しましても、発言を聞かないことには、審議の判断ができかねます」

 その時、ミハイルがタイムアップを宣した。


5月20日 エリック〔調教ゲーム〕

 なんということだ。気の毒に、みんなの芝居が長すぎて、ロビンはろくに弁明できないうちに審議の時間となってしまった。

 結果、ロビン・サンタは吊られた。

 フィルは何を考えているのか。なぜロビンを? 場をかきまわしているのか。狂人か?

 だとしたら、キースは狂人じゃなくて、真の占い師。いや、狼が化けているというのもあるな。フィルが狼ということもある。ぐぬぬぬ。しっかりしたまえ。おれ。

 風の音が強いな。……ん? 誰だ? こんな夜更けに。


5月21日  リアン〔犬・未出〕

 ミハイルが言った。

「朝だ。今日の惨殺死体はエリック。みんなで審議をはじめてくれ」

 しばし沈黙があった。霊媒は出ねえようだ。ジルがぼそっという。

「昨日処刑したロビンの判定、出ねえのか」

「――」

 あの、とライアンがのっそり言った。

「おら、実は占い師だっただよ。あのにゃんこ占い師は狼だでよ」

 おれはキースを見た。キースはこわばってしまっていた。

「弁明あるなら、言ったほうがいい」

「ちがうニャン。ライアンはうそつきだニャン。コスタが狼だニャン!」

「!」


5月22日 リアン〔犬・未出〕

 なんだえ、とコスタが扇をパタパタやるように手を動かした。

「自分が狼だからって、わらわに罪をなすりつけようとは、クソあつかましいかぎりじゃ。皆の者、首をちょんぎっておやり!」

 奥様、とフィルが慇懃に入る。

「申し開きなさいませんと。下賤の者には御身の潔白がわかりませぬ」

「わらわは白じゃ。以上」

 フィルが言った。

「で、ございます。キースが死刑で」

「にゃー!」

 おれはフィルを観察した。ずいぶん前に出る。こいつは狂人なのか。

「待て」

 とジルが止めた。

「ライアンも疑え」


5月23日  キース〔迷宮のキース〕

 ピンチだニャン。
 真の占い師が出てきちゃったニャン。

「おらの見立てじゃ、初日はヒロで白。んでも、キースの見と同じだで、出る必要ねえべって」

 ライアンめ。黙るニャン。

「キースは狂人かと思ったけんど、確認したら、黒だったで。引っ込んじゃいらんねと思って出てきただよ」

 もうダメだニャン。ライアンのほうが真面目に聞こえるニャン。でも抵抗するニャン。

「おれを吊ったら、この村は闇に包まれるニャン!」

 でも、みんなの目が冷たいニャン。すまん相棒。先に逝くニャ……アオーン!


5月24日 ヒロ〔クリスマスブルー〕

 選挙の結果、キースが吊るされた。

 にゃんころめ。狩人のまごころを踏みにじりおって。
 気持ちを切り替え、今夜はライアンを護衛するピョン。

 今夜は誰が喰――待てよ。
 ニセ占い師もおれを白といい、本物占い師もおれを白と言ったよな? 

 てことはよ? 

 狼さんは本物の占い師が白と言っていないグレーの市民にしか化けられない。その人数が減ると、簡単に選挙で吊られてしまう。
 ゆえに、白宣言の出たおれから食い殺すしか……え? なんですか。あんた? やめてください。ぴょおおおん!


5月25日  ジル〔不貞〕

「広場で、ヒロが無残な姿で発見された。では、審議開始」

 ライアンはすぐに言った。

「占ったのは、リアンさだ。白だっただ」

 その時、待って、とアンディが入った。

「リアンは黒だ、ですわ。あたしが真の占い師ですわ」

 おうや、とコスタが目をほそめる。

「ずいぶん遅いおでましだわえ」

 フィルも聞く。

「なぜ、今頃まで隠れていらっしゃったのです? 狩人も守っているかもしれないのに」

「その、出そびれて――占いで狼が出るまで待とうと思ったんですわ」

 リアンが言った。

「そろそろ霊媒出ろよ」


5月26日 ジル〔不貞〕

 しかたがない。おれは挙手した。

「おれが霊媒だ。刑死したロビンは白。キースは黒だった」

「……」

 フィルが言った。

「ライアンの見と一致してますな。――アンディ嬢。前二回は誰を占いました?」

「ええっと、エリックとコスタ、両方とも白でしたわ」

「……」

 リアンが言った。

「無難な回答だな」

 アンディはうろたえた。

「待てよ。ジルは本物の霊媒か? 誰か本物が隠れてないのかよ」

「ねえよ」

 おれは苦笑した。おれは本物だ。バカめ。
 コスタが言った。

「ニセモノの首をちょんぎっておやり!」


5月27日 ジル〔不貞〕

〔ジル・霊媒〕

 アンディは無様にも吊るされた。

(アホが)

 おれは気の毒になった。うまくしゃべれないんだから、最後まで隠れてればよかったんだ。何がしたかったんだか――。

(……?)

 ミハイルがゲームの終了を告げない。夜になった?

「霊媒は起きてくれ」

 指示で目を開けるとアンディのカードを見せた。

『人間』

(?!)

 狼じゃなかった。狂人か? 
 じゃ、フィルはなんなんだ?狂人じゃねえのか? 

 コスタは? まさかアンディは真……。クソ! おまえが人狼だったのか!


5月28日 フィル〔調教ゲーム〕

〔フィル・村人〕

 やられた。
 ゲームが終わらない。

 死んだアンディは狼じゃなかった。狂人か。ものおじして出られなかったのか?

 いや、彼が真の占い師だったのだ。ライアンがニセだ。
 つまり、リアンが狼だ。

 ライアンは狂人。すごいな。狂人のくせに狼キースをまっさきに処刑したのか。

 今夜はおそらく霊媒が噛まれる。つまり、明日は狼組と村人、2対2の戦いとなる。サイコロに持ち込むか。

 ……その前に、コスタ、あいつドジっこだって言ってたな。バカじゃないといいんだが。不安だ。


5月29日 ライアン〔犬・未出〕

〔ライアン・狂人〕

 うおおお。おら天才だべ! 

 いや、すかす、キースさ指名したのはまずかったべか。占い師だと思ったら、ありゃ狼だったべか。あらん。ごめん。どんまいだ。

 ニセ占い師として、ここまでかき回しただ。本物の占い師アンディも刈り取っただ。おら働き者だべ。

 だども、明日の評決はどうしたらいいべ。リアンさ、黒なのはもうアホでもわかるべ。

 わがるかな? 
 コスタ、案外わがんねんでねか?

 ――試してみるべ。リアン、あとでおらにおごるだよ!


5月30日 コスタ〔犬・未出〕

〔コスタ・村人〕

 ぎえええ。わらわ、全然わかんなーい! 

 狼って二匹じゃねーのかよ。キース死亡。アンディ死亡で終わりじゃねーのか。なんでまだ続いてんだよ。

 なんかノリでバシバシ処刑してきちゃったけど、みんな無辜の市民だった? うおおお。ごめんなさい。お詫びにギロチンにかかります。

 ……落ち着こう。とにかく狼一匹はまだ残ってるんだ。誰だ? リアン? ジル? ライアン? 

 え? もしかしてフィ、フィル? ……あ。今ちょっとゾクッとした。


5月31日 ミハイル〔調教ゲーム〕

 リアンは霊媒ジルを噛み殺し、再び目を閉じた。

 このゲーム面白い!
 人狼はキースとリアン。
 狂人はライアン。
 占い師はアンディ。
 霊媒はジルだった。

 狂人ライアンは味方のキースを占い師と勘違いして、処刑してしまった。だが、そのせいで真の霊媒ジルを騙すことに成功し、結果、本物の占い師アンディを処刑することに成功した。

 リアンは目立たず消えず、ただ混じっていた。潜伏は成功だ。だが、ゲームが続いたことでアンディが真の占い師だったことがバレた。もう逃げられないな。


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